現場は数十張のテントが立ち並ぶ閑静な住宅街である。事件は9月3日(日曜日)の早暁4時頃に発生したらしい。とある一軒家から、突如静寂を破ってけたたましい音が鳴り響いた。どうやら家の主は留守らしくいつまで経っても鳴り止まない。数十分も経った頃。とある男が慌てた様子で戻ってきて家の中に入り音を止めた。これで事件は一件落着、のはずであったが、数分後に再びけたたましい音。再び慌てた様子の男が止める。ところがこれでもまだ終わらず、三たび騒音が鳴り響くことになった。
あとになって、当の住民が周りにまるでコメツキバッタのように謝っているのが目撃されている。
その後,当の男性に話を聞くことが出来た。
ーどういうわけでこんな,はた迷惑な音を?
「いや、その、朝の目覚ましをかけていたんですが、トシのせいか早めに目が覚めてしまい、帰ってから消そうと家を出たんですが、どうも大変なことになってしまって」
ーどうも要領を得ませんね。その後どうしたんですか?
「いやー、朝食の準備の焚き火やらうどん鍋の世話やらに夢中になっているうちに、目覚ましのことをすっかり忘れてしまい・・・、やっぱりトシのせいですかね、でもうどんは美味しかったですね。あはは・・・」
ー笑って誤魔化してはいけません。目覚ましは止めた後も何度も何度も鳴って、迷惑の掛けどうしだったそうですが?
「それは・・・やはり慌てていて頭に血が上ったせいか,完全に止める、というのをしなかったせいです。やはり頭に血が上るのはいただけませんなぁ、遺憾です。うん。」
ーどこかの政治家じゃあるまいし、他人事みたいなことを言ってはいけません。
「いや、もう全く遺憾なことで。隣近所の皆さんには陳謝しましたが、本当に許してもらえたのかどうか・・・目が笑っていなかったような気もするので、この後が怖しいですね」
ーそれは私の知ったことじゃありませんよ。(了)
*本作品はフィクションであり、地名、団体名その他は架空のものであって、実在のものとは一切の関係はありません。
written by jsky.